(NFL)京都レッツラーン大学校 設立準備
(NFL) The Kyoto School of Professional Learning
                   (Preparation for establishment)
                   (NFL=Non-Formal Learning)
                                                       

 
NPO法人学習開発研究所
 

株式会社山岡製作所 取締役 横田吉男氏への先取りインタビュー

シンポジウム 京都・日本・海外、はたらくための学習(社会)をデザインする
「スーパー職人を生み出す源泉とは?」職場学習で「匠」を育てる山岡技能経営

知識社会の職場では個人の専門性の高さや創造力が重要になり、雇用形態が多様になるなかで、どこに所属しているかだけでなく、自分は何ができるかが、問われる時代になってくると考えられます。
その際に、昇進や起業などステップアップを応援するために、①個人の職能レベルが客観的にわかる基準の整備、②その上でどこでもいつでも知識・技能の向上をめざせる学習機会の提供、③そこで得た学習成果が職場や採用試験の場で正当に評価される枠組づくり、が重要になるでしょう。
EU域内では、すでに国を超えた労働者の移動が激しくなっています。労働者と雇用者が契約を結ぶ場合の問題の一つとして、労働者のスキルや職業経験の評価が指摘されます。これから働こうとしている国の基準と以前働いていた国の基準が異なると、これまで労働者が蓄積してきた自らの職能が公平に評価されない事態が起こります。そこでEUでは、職能レベルの共通化を進め、A国の◯レベルはB国の◯レベルに該当するといったようにフレームワークを作成しています。
日本でも厚生労働省の職業能力評価基準をはじめ、職能の基準作成が進んでいます。公的機関の基準と同時に、それを各企業の内部でどのように位置づけ、社員のスキルアップにつなげるかが課題となってきます。

今回のシンポジウムでは、職能のレベルの認定といった世界的な動向を踏まえ、社員の職能レベルの認定と向上に取り組む企業の実践事例をシンポジウムのなかで株式会社山岡製作所の横田吉男取締役にお話していただきます。当日お話いただく、職能評価と継続学習を組み合わせた独自の人財育成システム「山岡技能経営(MOS)」を実践に関する内容を少し先取りしてご紹介するために、インタビューをおこないました。

まず、「山岡技能経営(MOS)」の「MOS」とは「Management Of Skill」を略したもので、継続的な事業発展を目指すために次の5つの方針をご紹介します。

(1)社員のスキルレベルを明確にする。
(2)社員のスキルアップを個人ごとに管理し、目標レベルを早期に達成させる。
(3)スキルと職能資格を明確に一致させる。
(4)スキルレベルを給与で評価する。
(5)当社の技能者しかできない分野の仕事を積極的に拡大する。

5つの方針を具体化した事業として、次のものが挙げられています。

・スキル・マネジメント教育
・スキルの評価
・マンパワーUP活動
・押し付けOJT
・「匠の技」~スーパー職人制度
・技術の源
・国家資格取得支援

詳しくは…山岡技能経営

今回のシンポジウムではこのうち「スキル・マネジメント教育」と「スキルの評価」を中心にお話していただくことになっています。

━━ 人財育成について大切にしていることを教えてください。

横田取締役:
企業の収益率が下っている状況で企業内教育を通してなにができるか。それぞれの企業の体力、身の丈にあった教育を提供することが大切と考えており、社員1人ひとりが将来の人財として価値観、モチベーションをもって仕事に取り組むことで生産性を上げていくことを考えています。

━━ 「スキル・マネジメント教育」について教えてください。

横田取締役:
「スキル・マネジメント教育」は、企業内教育を経費削減のためにも「外注はしないでおこう」ということからスタートしました。講師は先輩がやろう、昔ながらの徒弟制度ではなく、「先輩から教えていただいた」と若手が思うことで、社内の人間関係を明るくすることもねらいの一つです。
また、講師を務めた社員には講師料を給与に加算する方式をとり、教育システムが維持継続するための仕組みづくりをしています。

━━ 評価制度について教えてください。

横田取締役:
まず自分たちが今いる職場、会社を全部否定しても将来性はないですよね。「こういう期待値はあるが、現状の実力との差は?」といったように、現状把握することが重要だと考えます。評価制度のフレームを外からもってきても、中身を自分たちでつくらないと上手く浸透しないので、まず現状の作業内容をチェックして必要な能力を一覧表にしました。そこから時間をかけて評価指標の項目をブラッシュアップしていきました。
山岡製作所では、1つの分野だと景気に左右されるとの考えにたち、創業時から多角的経営を目指してきました。その中で、装置の組み立てを例にあげると、新しい装置の組み立て作業では、入社10年の先輩と入社して3年の後輩では、後輩の方が早く組立てを覚える場合があります。その場合、後輩からすれば、先輩よりも仕事ができるのに、先輩の給与のほうが自分よりも高いのはなぜかと不満を持つことになります。
そこで事業ごとに仕事の内容は異なりますが、そのなかでも共通のスキル、例えば、ネジをしめるスキル、追加工するスキル、図面の読解力など、経験によって高められる能力、つまり仕事をする上での基礎の部分を評価の表にまとめました。
基礎の仕事ができることで会社の収益に貢献する方式です。固有の製品を追いかけてもどんどん形がかわっていくから、自分たちの身の回りにしぼった講座で基礎を着実に学ぶという切り口で進めてきました。社員の「学びたい」に会社が協力することを大切にしています。

━━ そうすると経営方針よりも個人の自己実現が重要になりますか?眼の前にある仕事と無関係と思われることをするとなるとそこに意味を感じることがなかなかむずかしくないですか?

横田取締役:
経営方針と個人の自己実現が一致していることが大切です。別々やったら会社になりませんからね。
社内の講座に参加して勉強するとポイントがたまる、ポイントがたまったら昇格できる資格を得ることができる。この方式が正の動機づけになっているようです。評価制度や講座を実施する場合、評価された後、あるいは学んだ後、どうなるのか目に見える形を示すことが重要だと思います。中小企業は経営者の考え方が重要で、山岡社長が社員への教育、社員の自己実現を大切に思っているからこそ、ここまで成功することができています。

━━ 京都レッツラーン大学校では、求職者が学ぶコストを抑えて自主的に職能を身に付けられる方法を模索しています。求職者の教育訓練に関連する助成金事業などあるにはありますが、施設設備など制約が強く、教えることが中心になり、学ぶひとが中心になって学んでいく考えが浸透していません。

横田取締役:
私の考えになってしまいますが、学ぶ場所が身近にあって、企業が積極的に参加することが大切だと思います。なぜなら学んだことを積極的に生かす場所は企業だからです。自分の感性にあった職場、自分の働きたい職場で働きながら学びたいという若者の思いを実現するために、個別企業が社会貢献的に引き受ける。そのためには、公の機関と協力して職場教育を提供するムードを大企業も中小企業ともつくっていく必要があると思います。
職場の雰囲気を味わうだけでなく、企業の生産に直接関わるようにする。その働いた分の時給は、単なるアルバイト代ではなく「学んだ成果も含まれるお金」ということに意味があると思います。

━━ ありがとうございます。当日のお話を楽しみにしております。よろしくお願いします。

株式会社山岡製作所 1954年創立  http://www.yamaoka.co.jp/
金型部門、設備部門、量産プレス部門を有する相乗効果によりお客様の目線に立った高品質な製品を提供。「精密プレス加工ならYAMAOKAへ」金型・設備の製作から製品供給、受託生産や技術者派遣まで要望に応じたサポートを提供。
2012年11月技能検定に関する永年の貢献が評価され、厚生労働大臣より技能検定関係優良事業所に認定。
きめ細やかな人材育成を通して匠の技能者を育てる当社独自の取り組み「山岡技能経営(Management Of Skill)」を進める。「企業は人なり」社員一人ひとりの技能や技術は会社の大切な財産であり、その伝承と育成の仕組み化により、企業の経済的発展を目指す。京都府から「知恵の経営実践企業」認証(第1号)を受けている。